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小説「花の歳月」宮城谷昌光 ~竇猗房、感動の姉弟愛

竇猗房の姉弟愛 感動の小説「花の歳月」宮城谷昌光 講談社

以前、タイトルだけ紹介して未読だった小説を入手できました。中国テレビドラマ「美人心計」の主人公である竇猗房の生い立ちの確たる資料はないから、ドラマと小説とでは全く話が異なります。しかし、テレビドラマの方は全くの虚構です。彼女には兄と弟がいて、弟と感動的な再会をするのにドラマには出てこないのは脚本上の都合でしょう。一方、小説も生い立ちの部分は、想像に頼って書いているのが事実を歪曲してまでではないでしょう。

竇家は古くからの家柄で学問はあるが裕福とは言えず、一家は農業で生計をたてている。彼女が10才、弟の広国が4才の時。地元の長老(郷老)が来て、全国から銘菓の子女を集め皇宮で養成するからと県の役所に連れていかれた。馬車で長安に行く時に県の役所で彼女は家族と別れを告げた。その時、弟の髪からいやな臭いがするので、洗髪の道具を借りて髪を洗ってあげた。彼女が馬車で去った後、市場で広国は行方不明になってしまう。人さらいに連れていかれたのだ。竇猗房の方は14の時に他の4人の娘と共に代国に送られる。代国の王とその母(薄姫)は彼女達が呂太后のスパイと疑う(これはドラマと同じ設定だね)。しかし、彼女は薄姫のなぞかけに鮮やかに応えて信頼を得て代王の妃となり、やがて皇后にまでなる。さて、広国はあちこち転売されるが、やがて豪商の家で働き、主人が彼の利発さに目をかけてくれるようになった。そして、姉が皇后になったと知り、名乗り出る。竇猗房は衝立の後ろに隠れ、皇帝がいろいろ質問をする。他に覚えていることはと聞くと、彼は姉が髪を洗ってくれた時のことを話した。竇猗房は思わず駆け寄って弟を抱きしめ泣いた。周囲もたまらずもらい泣きをした(これは史記にある実話)。この後のラストにも作者オリジナルのもう一つの涙の再会があります。


作者後書きによれば、史記の外戚世家を読み小説にしたいとずっと思っていたそうだ。作者の文章は志賀直哉を思いおこさせる。簡勁で口語文なのだが、何か漢文体を思わせ、古代中国世界にふさわしい文章だ。

彼女の兄弟が外戚として横暴になるのを恐れ、宮廷は師をつけて教育したので、二人とも傲らず謙虚な生涯だったと史記は書いている。教育の成果もあるだろうが、もともと竇家の家風がそうなのだろう。3人とも人格的に優れていたのは、文帝やその子供の景帝にとっても幸運だったと言える。


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by show_isa | 2012-12-17 22:28 | culture | Comments(0)
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