人気ブログランキング |
新型コロナウィルス Covid-19 >>

現代中国経済入門(東京大学出版会)-人口ボーナスから改革ボーナスへ

投資に直接役立つわけではありませんが、大局的な見方も必要だと思いますので、
読み終えた経済書について、メモ書き程度のものですが、ご紹介します。日本の失われた20年の失敗に触れ、中国がその轍を踏まないようにと述べているのが興味深い。


現代中国経済入門(東京大学出版会)-人口ボーナスから改革ボーナスへ


中国の経済学者ツァイ・ファン(全人代常務委員、中国社会科学院副院長)の著書 China's Economic Growth Prospects From Demographic dividend To Reform Dividend の翻訳である。原著は2016出版。


中国は70年代末に計画経済から市場経済に置き換えられた結果、1978年から2012年の期間のGDP成長率は年平均9.8%となった。
新古典派成長理論では、労働力は希少で資本の限界生産性が逓減すると仮定しているがこれは多くの発展途上国には当てはまらない。そのため、ポール・クルーグマンは東アジアはかってのソ連のように行き詰まると予測する誤りを犯した。二重経済では労働力供給は無制限であり資本の限界生産性は逓減しない。人口動態の変化が成長率を鈍化させる重要な要因ではあるが「中所得国の罠」で成長率が鈍化した国々の経験から、中所得から高所得国に移行段階では発展戦略と社会政策を抜本的に変える必要がある。


その点、日本は高所得国の罠にはまったといえる。過去の成功の夢から覚め、将来必ずやってくる減速といかに共存し、停滞を避けるかである。供給サイドで成長を高めようと経済刺激策を取る誘惑にかられたのが日本を停滞に招き入れた要因である。景気刺激策と長期的な成長の持続性を高める政策を適切に組み合わせることが中国にとって大切である。


中所得国の罠にはまった国々の失敗は、

  • 政策の失敗と制度の問題でパイが拡大しなかった

  • パイが限られているのに平等に分配されなかった

  • 既得権益層が政策に影響を与えた

  • 政治家はポピュリスト的主張をするがリップサービスにとどまった
による。


二重経済(農業セクターと近代セクター)には古典派経済学を適用した二重経済理論が妥当する。著者は2004年がルイスの転換点と考えている( 労働力不足と賃金上昇が起き始める時点を考え、農村余剰労働力の枯渇の定義を採用していない。)。
低出生率、低死亡率、低人口増加率の段階に進んだとき、二重経済から脱していくことになる。未だに中国の人口が2040年まで増加して16億になると信じている人がいるが、2010年に生産年齢人口はピークに達している(人口ボーナスの転換点)。従って資本の収穫も逓減する方向に向かうのは不可避である。投資を続けるだけでは成長を持続できない(著者は潜在成長率が2011年から2015年は7.6%、2016年から2020年は6.2%と見ている)。


既存の経済学にはおあつらえ向きの理論はないが、新たな成長エンジンを見いだすしかなく、生産要素の投入拡大によって主導される成長方式からTFP(Total Factor Productivity)すなわち技術革新など生産性の向上に主導される成長方式への転換が求められる。
なお、日本の人口ボーナスの転換点は1990年初頭。インドは2035年頃、韓国は2010年過ぎ。


教育をより広くより深く行い人的資本の蓄積をすれば、第2の人口ボーナスをもたらすかもしれない。
改革と成長はトレードオフの関係にあると多くの学者は信じており、いたずらに成長を追求せず潜在成長率を高める(制度的障壁を取り除く)改革の効果が、改革ボーナスである。
創造的破壊がおき、変化に対応できない企業・投資家は退出することになる。(政策的保護を求めたり改革を遅らせるしれない)既得権益集団に譲歩することは経済成長を遅らせ停滞させる恐れがある。


人的資本の蓄積に日本は失敗した。
日本は大学教育の拡大抑制という失敗を犯し、失われた20年の遠因だった可能性がある。教育には外部経済が存在するので政府はその発展にもっと責任を負うべきである。


素人には専門的評価はできないが、説得力ある論考のように思われる。日本は財務省が目先の財政ばかり考え、大学教育と基礎研究を軽視してきたことが中国から見た他山の石となってしまったことは残念極まりないです。



by show_isa | 2020-03-08 20:59 | small talk | Trackback(4) | Comments(0)
トラックバックURL : https://showisa.exblog.jp/tb/28881856
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Tracked from cialis prices at 2020-03-15 21:12
タイトル : cialis prices
現代中国経済入門(東京大学出版会)-人口ボーナスから改革ボーナスへ : Show Isa のブログ... more
Tracked from cialis at 2020-03-24 09:29
タイトル : cialis
現代中国経済入門(東京大学出版会)-人口ボーナスから改革ボーナスへ : Show Isa のブログ... more
Tracked from cialis tadal.. at 2020-03-24 15:55
タイトル : cialis tadalafil
現代中国経済入門(東京大学出版会)-人口ボーナスから改革ボーナスへ : Show Isa のブログ... more
Tracked from amoxicillin .. at 2020-03-25 15:51
タイトル : amoxicillin 875 mg
現代中国経済入門(東京大学出版会)-人口ボーナスから改革ボーナスへ : Show Isa のブログ... more
新型コロナウィルス Covid-19 >>